奥殿高欄下の猿 |
「鎖でつながれた猿」伝説の残る猿 |
奥殿周囲三方を囲む高欄下には、12ヶ所・13頭もの猿が張り巡らされています。どの猿も斗栱の上に乗り、あたかも高欄を支えているかのような、可愛いらしく、滑稽なしぐさの構図が眼を惹きます。実はこれも全国の寺社建築に類を見ない、大変珍しい装飾の一つだといわれているものです。
さて、聖天様の猿にまつわる伝承を二つご紹介しましょう。
一つは、奥殿南面高欄下右端の猿の伝承で、「鎖でつながれた猿」といって、伝承によると毎夜抜け出しては田畑を荒らしたので、和尚様に鎖で繋がれてしまいました。後に改心した猿は和尚様に許され、鎖をはずしてもらったという話です。
もう一つは、かつて境内に実在した猿小屋が、ある年の台風で壊れ親子の猿が逃げ出しました。
父猿は翌日保護されましたが、母猿と子猿が見つかりません。その年の秋、稲刈り中の人によって、やせ細り抱き合って死んでいる母と子の猿が見つけられたということです。どれも今では殆ど知る人も少ない話しになっています。
一般的に、寺社建造物に取り付けられた龍は、全て揃っているのが普通だといわれるなかで、聖天堂に見られる70頭以上の龍の姿形・色は、全部異なっており、これも聖天堂の特徴といえるでしょう。 |
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形・色など全てが異なる聖天堂の龍 |
著者紹介:熊谷市在住。上武郷土史研究会主宰、阿うんの会・講師。
全国歴史研究会、埼玉県郷土文化会、木曽義仲史学会、他各種会員。
主な著書:『妻沼聖天山』、『甦る「聖天山本殿」と上州彫物師たちの足跡』(以上さきたま出版会)、『寺社の装飾彫刻・関東編上』(日貿出版社)、
『斎藤氏と聖天堂』(熊谷市立熊谷図書館)、『歴史と文化の町・“めぬま”』(阿うんの会)
埼北ちっちゃな旅「深谷・妻沼版」
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