奥殿軒唐破風下に嵌め込まれた彫刻は、史料によると太鼓羽目彫刻と呼ばれていました。 南面・西面・北面の計3箇所に1枚ずつ嵌め込まれ、いずれも中国の故事を、長さ・140cm、幅・45cm、厚み・18cmあまりの欅材を彫り抜いています。 西面の太鼓羽目彫刻は、「司馬温公・瓶割り図」といいます。 温公が子供の頃、友達と水瓶の傍で遊んでいた時、友達が誤って水瓶に落ちたので、機転を利かせ、水瓶を割り助けたというエピソードを讃えたものです。 つまり、どんなに高価なものでも人の命には替えられないということを表現したもので、多くの寺社で使われています。 太鼓羽目彫刻は、南・西・北の各面共に、下から見上げて自然に見えるように、前傾して彫られ、他の羽目彫刻より立体感の強い仕上がりです。
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奥殿-西面・唐破風下の太鼓羽目彫刻
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西面には、3枚の大羽目彫刻が嵌め込まれ、「七福神」の遊ぶ様子がメインとなっています。 右側に「大黒の俵・恵比寿鯛釣り竿・唐子七人」、中央に「布袋・恵比寿・碁打ち大黒・酒」、左側に「布袋袋上に傘鉾・唐子七人」が彫られています。 周りで大きな魚を抱えた子供が大黒の俵の上で遊び、傍で恵比寿の釣竿を引きあう子供、囲碁に興じる七福神たちを見つめる子供、布袋様の袋の上で笠をさす子供、小太鼓をたたく子供、さらには袋を引っ張る子供、等が描かれていることから、平和でのどかな様子が表現されているのです。 このように、三人の神様(七福神)が酒を飲みながら碁打ちに興じ、傍で子供たちが遊び戯れているところは、争いのない平和な世の中を表している訳で、聖天様が平和を願う心を表現していると考えられます。(文・写真:阿部修治)
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奥殿-西面・大羽目彫刻
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著者紹介:熊谷市在住。上武郷土史研究会主宰、阿うんの会・講師。
全国歴史研究会、埼玉県郷土文化会、木曽義仲史学会、他各種会員。
主な著書:『妻沼聖天山』、『甦る「聖天山本殿」と上州彫物師たちの足跡』(以上さきたま出版会)、『寺社の装飾彫刻・関東編上』(日貿出版社)、
『斎藤氏と聖天堂』(熊谷市立熊谷図書館)、『歴史と文化の町・“めぬま”』(阿うんの会)
埼北ちっちゃな旅「深谷・妻沼版」
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